コラム

令和2年 年末調整の変更点について

2020.9.15

人事・人材開発

HRプラス社会保険労務士法人
マネジャー 社会保険労務士
須永 悠

平成30年度税制改正大綱および令和2年度税制改正大綱の影響により、令和2年の年末調整では、下記5点の変更が行われます。変更点について、概要をご紹介します。

1)給与所得控除の引き下げ

  • 給与所得控除の額が一律10万円引下げられることになりました。
  • 控除の要件である給与等の収入金額の上限が年収1,000万円から年収850万円になりました。
  • 給与所得控除額の上限額が220万円から195万円になりました。

2)基礎控除の引き上げ

  • 基礎控除にも適用要件が設定されました。(収入額により基礎控除が適用されない場合もあり)
  • 基礎控除の額が最大48万円に引き上げられることになりました。
  • 基礎控除等申告書の提出が必要となりました。

1)の給与所得控除の引き下げと合わせると、年収850万円まではプラスマイナス0円になり、現行と比較して影響はありませんが、年収850万円を超えると、実質的に所得税の負担が多くなります。

3)所得金額調整控除の創設

1)2)の税制改正に伴い、年収850万円を超えると所得税が増税となることを受けて、子ども・特別障害者等を有する方の負担を軽減するため、所得金額調整控除が創設されました。

  • 所得金額調整控除額 = (年収 – 850万円) × 10%
    ※但し、年収1,000万円をこえる場合は、年収は一律1,000万円で計算します。
  • 年収が850万円を超える方で、イ~ハに当てはまる場合に適用されます。
    イ 本人が特別障害者に該当する者
    ロ 年齢23未満の不要親族を有する者
    ハ 特別障害者である同一生計配偶者 または 扶養親族 を有する者
  • 所得金額調整控除を受ける場合、「所得税額調整控除申告書」の提出が必要となりました。

4)各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し

3つの改正に伴い、各種所得控除を受けるための配偶者や扶養親族等の合計所得金額の要件も見直されました。

扶養親族等の区分 合計所得金額要件
改正前 改正後
同一生計配偶者 38万円以下 48万円以下
扶養親族 38万円以下 48万円以下
源泉控除対象配偶者 85万円以下 95万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者 38万円超123万円以下 48万円超133万円以下
勤労学生 65万円以下 75万円以下

5)ひとり親控除 および 寡婦(寡夫)控除の見直し

  • 婚姻歴(未婚・離別など)や性別にかかわらず、ひとり親である場合には、ひとり親控除として、35万円を控除することとされました。
    イ その人と生計を一にする子を有すること
    ロ 合計所得金額が500万円以下であること
    ハ その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
  • 改正後の寡婦控除
    本人の合計所得金額が500万円以下の単身者で子以外の扶養親族がいる寡婦、または扶養親族がいない寡婦は、引き続き寡婦控除として27万円を控除することとされました。

まとめ

年末調整は、年1回の重要な業務です。変更点をしっかりとチェックして正しく計算しましょう。実務では、給与計算ソフトがほぼ自動で年末調整の計算を行ってくれると思いますが、セミナーでは、実際の書類を見ながら、年末調整の計算の流れを電卓を使用して自分で計算します。
基礎と変更点をしっかりと身に着け、今年の年末調整計算に活かしてください。

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